ゼミ卒業研究
医療機器管理
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【高橋ゼミ】
透析監視装置
Ⅰ.基礎生理
腎臓の構造と機能
構造
腎臓は腰部脊柱の左右両側で腹膜の後ろにあるソラ豆状の1対の器官です。成人の腎臓は長さおよそ10cm、幅5cm、厚さ3cmで、表面は線維性の被膜に覆われ、腎臟の実質は外層の皮質と内層の髄質に分けられます。
機能
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体液量、体液の浸透圧・pHの維持
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尿素や尿酸などの代謝産物や体外から取り入れた薬物などの除去
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グルコースやアミノ酸などの有用物質の保持
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エリスロポエチンやレニンなどのホルモンの産生・分泌など
ネフロンの構造
腎臓はネフロン(腎単位)と呼ばれる尿生成の機能単位からなります。1個の腎臓には約100万個のネフロンが規則正しく配列しています。それぞれのネフロンは腎小体1個とそれに続く尿細管からなります。腎小体は皮質に散在する直径0.1〜0.2mmの小体で、毛細血管が毛マリ状に集まった糸球体とそれを囲むボーマン嚢より構成されています。
尿の生成から排泄まで
糸球体で生成された原尿はボーマン嚢→尿細管へ流れ、毛細血管との間で種々の物質の再吸収と分泌が行われ、尿となります。その後、近位尿細管→ヘンレ係蹄→遠位尿細管→集合管→腎盂→尿管→膀胱→尿道へと流れ、体外へ排泄されます。
生成される原尿は成人で約170L/日となります。その中にはNaClとブドウ糖が含まれていますが、尿細管で99%再吸収され、実際に尿として排泄されるのは水分量としては1〜1.5L/日となります。
Ⅱ.基本回路
構成
透析監視装置の標準的な構成としては、ダイアライザ、抗凝固薬、生理食塩液ライン、静脈圧モニタ、血液ポンプ、気泡検知器、漏血検知器などです。
血液の流れ
患者から脱血された血液は、脱血部位→血液ポンプ→動脈チャンバ→ダイアライザ→静脈チャンバ→気泡検知器→送血部位へと送られます。
透析液の流れ
透析液は透析液供給装置→透析液監視装置→ダイアライザへと流れ、漏血検知器を経て廃液されます。
※マーカー箇所は重要項目です。
【回路構成の注意点】
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透析装置の気泡検知器は、患者への気泡混入を防ぐため、必ず静脈側(返血側)に設置します。
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漏血検知器は透析液側に設置しますが、ダイアライザからの血液漏出をモニタリングするため透析液供給側ではなく、透析液廃液側に設置します。
透析膜の種類と特徴
Ⅲ.装置(モニタ)
透析中のモニタ項目
血液回路側
血流状態
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ピローの凹み具合、血液ポンプの回転数、静脈チャンバ液面レベル、血液回路の屈曲など
回路内凝血
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静脈側回路内圧、動静脈チャンバ内凝固など
気泡混入
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超音波気泡検知器
※抗凝固剤濃度、透析液のエンドトキシン濃度、透析液の粘度、消毒剤の残量などは、透析中の監視項目ではありません。
透析液回路側(測定機器)
透析液濃度:電導度計
透析液温度:温度計
透析液圧 :圧力計
透析液流量:フローメータ(流量計)
漏血 :光電素子漏血計
Ⅳ.その他(透析の種類と特徴)
酢酸透析
酸塩基平衡を是正するためのアルカリ化剤に酢酸ナトリウムが使用され、透析液が一剤化されているものです。酢酸ナトリウムは副作用が多く、現在、使用が減少しています。
【酢酸ナトリウムの副作用】
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頭痛、悪心、嘔吐などの不快症状
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末梢血管拡張作用や平滑筋抑制作用による末梢血管抵抗の減少
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心機能抑制作用による末梢循環不全
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脂質代謝が亢進する結果、中性脂肪の産生増加により高脂血症、動脈硬化、不整脈の一因となります。
重炭酸透析
代謝経路がなく、より生理的なアルカリ化剤です。
緩衝剤として酢酸ナトリウムを少量含みます。重曹は難溶性であり、Ca、Mgと塩を形成し沈着するため、長時間の保存は出来ません。
無酢酸血液濾過
透析液中に酢酸を全く含まず、酢酸負荷による副作用を防止することができる透析液です。重炭酸ナトリウム溶液を後希釈法にて補充する必要があり、高率よく酸塩基平衡を是正することが可能です。過剰に重炭酸ナトリウム溶液を入れた場合、合併症として、高Na血症や代謝性アルカローシスとなります。
腹膜透析
生体膜である腹膜を透析膜として利用し、血液中の不要な老廃物や水分を除去する方法です。腹腔内に留置したカテーテルから腹腔内に腹膜専用透析液を長時間留置させ、濃度勾配による拡散と浸透圧勾配により、物質と水分の移動が行われます。血液浄化法の中で唯一血液循環回路が在在しません。
【参考・引用文献】
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第2種ME技術実力検定試験対策テキスト2017年度版:一般社団法人東京都臨床工学技士会:p336、343、345、347:2017
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臨床工学講座生体機能代行装置学血液浄化療法装置:医歯薬出版株式会社:p57:2015
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人体の構造と機能第4版:医歯薬出版株式会社:p312~315:2015
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MEの基礎知識と安全管理改訂第6版:日本生体医工学会ME技術教育委員会:p294:2017