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人工心肺装置

※マーカー箇所は重要項目です。

Ⅰ.基礎生理

心臓の構造

 心筋は自己意識下で動かすことができない不随意筋であり、骨格筋と同様である横紋筋に区別されます。

血液の流れ

 全身を巡った血液は大静脈右心房右心室肺動脈肺静脈左心房左心室大動脈の順に流れ再び全身の臓器・組織へと流れます。

 循環血液量は、体重の約1/13です。

 

弁の枚数

 僧帽弁は2枚で、大動脈弁、肺動脈弁、三尖弁は3枚です。

 

心拍出量の血流配分

 

動脈系

 大動脈弓部から分岐している動脈は、中枢側から腕頭動脈左総頚動脈左鎖骨下動脈の3本です。さらに腕頭動脈は、右総頚動脈右鎖骨下動脈に分かれます。

 

Ⅱ.基本回路

構造

 人工心肺装置の標準的な構成としては、貯血槽血液ポンプ人工肺動脈フィルタ熱交換器酸素ブレンダ(酸素供給装置)などであり、これらを血液回路塩化ビニル製)で接続しています。

 ※PCPSは閉鎖回路のため貯血槽は含まれません。

 

血液の流れ

 患者から脱血された血液は、脱血部位貯血槽血液ポンプ人工肺動脈フィルタ送血部位へと流れます。

 

血液ポンプ

ローラポンプ

【利点】

  • ポンプ回転数と拍出量が比例しているため、流量を推定できる

  • 血液粘性や出口部圧力などの抵抗が変化しても拍出量は変化しない

 

【欠点】

  • 液体を強制的に送るため回路破裂や血管損傷の危険性がある。

  • オクリュージョン調節が必要である。

 

遠心ポンプ

【利点】

  • 血球破壊が極めて少なく、一般の体外循環や長期補助循環に使用される。

  • オクリュージョン調節が不要である。

 

【欠点】

  • 送血圧(後負荷)により拍出量が変化するため、流量計が必要である。

  • ポンプを停止したら、逆流が生じる

 

ローラポンプと遠心ポンプの比較

 

人工肺

 人工肺は気泡型人工肺膜型人工肺に大別できます。

 静脈血から炭酸ガスを除去し、酸素を供給し動脈血へと変化させる肺機能を代行する装置です。

 

  • 気泡型人工肺

 血液中に供給酸素ガスを直接封入し、酸素化する人工肺です。

 気泡と血液の接触面積によりガス交換能力が変化するため、気泡が小さいほどガス交換能力が高くなります。また血液中から気泡を除去させることも重要であり、除泡装置を必要とします。

 

  • 膜型人工肺

 膜を介しガス交換をおこなう人工肺です。

 血液損傷が少なく、より生体の肺に近いガス交換が出来ます。

 外部灌流型は内部灌流型に比べ血液成分が壊れにくいことも特徴の一つです。

 

【膜型人工肺の膜材】

  • 均質膜 シリコーン

  • 多孔質膜ポリプロピレン

  • 複合膜 ポリメチルペンテンポリオレフィン

 

Ⅲ.装置(操作・モニタリング)

操作

  • 脱血する際の落差は、1mにします。それ以上の落差では、逆に脱血量が低下してしまいます。

  • 抗凝固剤には、ヘパリンを使用し、ヘパリンの中和剤にプロタミンを使用します。ヘパリンの注入は必ずカニュレーション前に行います。

 

モニタリング

【生体側】

動脈圧

 60〜80mmHgの範囲内で調節します。

 

中心静脈圧

 スワンガンツカテーテルで測定され、人工心肺中は脱血にて低値(完全体外循環中では0mmHg)を示します。

 

心電図

 四肢誘導(Ⅱ誘導)などで把握し、人工心肺中もモニタリングが必要です。

 

患者体温

 深部体温にて把握します。深部体温とは外気温に影響されない温度を意味し、人工心肺中は、直腸膀胱食道、で測定します。

 

電解質

 充填液の希釈によりNa値が低下し、心筋保護液の注入や輸液、尿量の低下でK値が上昇します。またCa値は輸血により低下し、心収縮力の低下や凝固能の低下を招くため、Ca製剤の注入により補正をします。

 

Ht値

 血液希釈により低下します。安全限界値として、20%以上を目標とします。補正は血液濃縮または輸血にて行います。

ACT値

 120秒程度を正常値とし、ヘパリン注入で人工心肺中、400~600秒に維持します。

 

不要なモニタリング項目】

 気道内圧呼吸回数などは、人工呼吸器(麻酔器)のモニタリング項目であるため、人工心肺操作で直接的には不要です。また、脳波も人工心肺操作に必要ないモニタリング項目です。

 

【装置側】

回路内圧(送血圧)

 300mmHg以下にします。測定は送血回路動脈フィルタ部分で行います。

 

ポンプ流量

 遠心ポンプは送血側の圧力の変化で流量が変化するため、必ず血流計で拍出量を把握します。

 

酸素濃度

 血液中の酸素分圧を調節します。目標値を300mmHg前後で、低下した場合は酸素濃度を上げ、上昇した場合は酸素濃度を下げます。

 

酸素流量

 血液中の二酸化炭素分圧を調節します。目標値は40mmHgで、低下した場合は酸素流量を下げ、上昇した場合は酸素流量を上げます。

 

送血温と脱血温

 送血温人工肺出口部の送血回路で測定し、脱血温貯血槽の脱血回路接続部でそれぞれ測定します。送血温も脱血温も冷温水槽からの供給水温との温度差を10℃以内とします。

 

貯血槽レベル

 循環血液量を把握するモニタリング部位であり、重要なモニタリング項目です。貯血槽レベルが低下する原因に脱血不良や尿量増加などがあります。

 

【参考・引用文献】

  • 第2種ME技術実力検定試験対策テキスト2017年度版:一般社団法人東京都臨床工学技士会:p316~326:2017

  • 臨床工学講座生体機能代行装置学体外循環装置:医歯薬出版株式会社:p33:2015

  • 人体の構造と機能第4版:医歯薬出版株式会社:p157:2015

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