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人工呼吸器

Ⅰ.基礎生理

気管と気管支の構造

 気管は喉頭に続く長さ約10〜12cm、直径約2cmの管で、食道に沿って胸腔を下った後、左右2つに分かれて気管支となり、左右の肺に入ります。成人において、気管分岐部での分岐角度は左右で異なり、右は約25°左は約45°となります。

※マーカー箇所は重要項目です。

 

肺の構造

 肺は左肺と右肺より構成されています。右肺は上、中、下葉左肺は上葉と下葉の肺葉に分かれています。そのため、右肺は左肺よりやや大きくなっています。また、肺の先端部を肺尖といい、底面を肺底といいます。肺の表面は胸膜に被われ、中では気管支が分岐を繰り返して肺胞に達して、そこで空気と血液との間のガス交換が行われます。

 

肺胞の構造

 肺胞では、肺胞内の気体と周囲の毛細血管内の血液との間でガス交換が行われます。肺胞は1層の呼吸上皮細胞(肺胞上皮細胞)に囲まれた球状の小胞であり、内部の気体を肺胞気といいます。

 肺胞の直径は0.1〜0.2mm総数は両肺で約3億個といわれ、ガス交換の行われる総呼吸面積は約70㎡にも達します。

スパイロメトリー

〈肺気量分画〉

【加齢に伴う呼吸機能の変化】

 加齢によって呼吸筋の筋力が低下し、呼気を出しにくくなる結果、残気量増加します。また、肺活量1秒率減少します。

Ⅱ.基本回路

構成

 人工呼吸器の標準的な構成としては、吸気弁加温加湿器ネブライザウォータートラップYピース呼気弁などであり、これらを蛇管と呼ばれる管で接続しています。

 人工呼吸器本体を駆動させる駆動源として、電源及び酸素圧縮空気が使用されます。

 

ガスの流れ

 ガス供給装置から送られたガスは、本体吸気弁加温加湿器・ネブライザYピースへと送られ、患者へと流入します。その後、Yピース呼気弁本体へと流れます。

 

【回路を組み立てる際の注意点】

  • 人工鼻と加温加湿器の併用は禁忌です。

  • ウォータートラップは水の逆流を防ぐため、患者よりも低い位置に設定します。

 

Ⅲ.装置(アラーム・点検)

 

アラーム

低圧アラーム

原因

  • 呼吸回路の亀裂

  • 呼吸回路接続部のはずれ

  • 気管内チューブのカフ漏れ

  • 吸気弁、呼気弁の閉鎖不全など

高圧アラーム

原因

  • ファイティング

  • 呼吸回路の屈曲・閉塞

  • 気道内分泌物の貯留

  • 吸気弁、呼気弁の閉塞など

 

点検

始業点検

  • 機器本体、呼吸回路の確認

  • 呼吸回路のリークテスト

  • トリガ感度の調整など

 

使用中点検

  • 機器本体、呼吸回路、回路内圧の確認

  • 正常な換気の確認など

 

終業点検

  • 機器本体、呼吸回路の確認

  • 呼吸回路および加温加湿器からの水分除去

  • 機器本体外装の清拭など

 

定期点検

  • 部品の交換

  • 測定機器を用いた性能点検など

 

Ⅳ.その他(換気モード)

 

CPAP(Continuous Positive Airway Pressure:持続的気道内陽圧)

 自発呼吸時、気道内圧を常に一定の陽圧に保つ換気モードです。ウィーニングの最後の段階で用いられます。吸気のタイミング、換気量、吸気フロー、吸気時間、呼気へのタイミング等、全て患者に依存するため、自発呼吸が認められる患者にのみ使用される換気モードです。

 

PSV(Pressure Support Ventilation:圧支持換気)

 自発呼吸がある患者の呼吸仕事量を軽減するために、一定の圧をかける換気モードです。設定された吸気圧値に達するまでガスを気道内に急速に送り込む方法であり、補助呼吸の同調性に極めて優れています。

 

SIMV(Synchronized Intermittent Mandatory Ventilation:同期型間欠的強制換気)

 患者に自発呼吸をさせながら、一定周期(時間)ごとに開始される強制換気にも患者の吸気の開始に同調させて換気を行うモードです。トリガ機構を用いて、患者の吸気の開始と強制換気とを一致させて行う方法であり、ファイティングも少なく人工呼吸器からの離脱時に用いられます。

 

 

【参考・引用文献】

  • 第2種ME技術実力検定試験対策テキスト2017年度版:一般社団法人東京都臨床工学技士会:p354、370、374:2017

  • 臨床工学講座生体機能代行装置学呼吸療法装置:医歯薬出版株式会社:p142:2015

  • 人体の構造と機能第4版:医歯薬出版株式会社:p244~246:2015

  • MEの基礎知識と安全管理改訂第6版:日本生体医工学会ME技術教育委員会:p315:2017

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